草木染めへの関心が結実したBELLUSTAR TOKYOとの取り組み

そんなWatanabe Textileのブランドとしての個性やものづくりに対する姿勢に共感したBELLUSTAR TOKYOは、2024年に協力の打診をしました。渡邊さんが打診を快諾したのは、東急歌舞伎町タワーの建築を注目していた建築家である永山祐子氏が手がけていたこと、さらに、テーマが「桜のアップサイクル」だったことが決め手だったそうです。実はその頃、渡邊さん自身も草木染めや桜染めに関心を持ちはじめたタイミングだったのです。

最初の取り組みで生まれたのは、桜染めの扇子でした。ただ、普段扱っている糸とは異なる草木染めの糸は、扱いも一筋縄ではいきませんでした。

渡邊「大抵は紙管に巻かれた糸が届くのですが、今回は手染めのため、綛(かせ)の状態で受け取って自分で巻き直す必要がありました。その工程で綿ぼこりも予想以上に多く出て、思っていた以上に手間がかかりました。桜という限られた資源を預かっているという責任と緊張感もありましたね」

それでも、完成した扇子を手にしたときには、「本当に美しいものができた」とその仕上がりに驚いたといいます。

ホテルを彩った桜で糸を染めた扇子



そして2025年、「桜アップサイクルプロジェクト」第二弾として桜染めのマフラーづくりが始まりました。素材には、Watanabe Textileが得意とするキュプラに加え、オーストラリア産のラムウールを使用しています。染めを担当しているのは、茨城・つくばの工房 futashiba248。工房を運営する関夫妻は、渡邊さんが初めて草木染めのワークショップに参加した際の先生でもあります。

渡邊「草木染めにおいて、僕にとって原点のような存在です。今回も相談できてとても心強かったですね」


煮出した液を濾(こ)す


染める


futashiba248 関夫妻

マフラーは、単純な平織りではなく、二重構造による織り方を採用しています。洗濯後の自然な縮みを計算に入れて、独特の風合いを生み出す設計です。



このマフラーを織り上げるのは、40年以上前から使い続けているというドビー織機。渡邊さんが「体の延長のような」感覚で作業を行えるという理由から、丁寧にメンテナンスをしながら使い続けているそうです。

再び脚光を浴びる、富士吉田の織物文化

かつてはOEM生産が中心だった富士吉田の織物産業も、今ではWatanabe Textileのように自社ブランドを立ち上げる工場が増えてきました。

渡邊「有名ブランドの製品を作っていても、名前が出ないのがOEMです。だから“富士吉田ってどんな産地?”とわかりにくかったんです」

行政の支援やSNSの活用も追い風となり、若い世代も地元の産業に新たな魅力を見出しています。

渡邊「東京造形大学との産学協同開発企画を行っているのですが、プロジェクトに参加した学生が卒業後に富士吉田で働いてくれるケースも増えています。最近では、インターン希望や工場見学のお問い合わせも増えてきました」

昨今は、富士山を背景にした街並みや織物文化に惹かれて、インバウンドも多く訪れるようになりました。

渡邊「海外の方たちからは、“草木染めのものはありますか?”とよく聞かれます。日本人よりも、自然由来のものに価値を見出しているように感じますね。

自然からいただいたものを無駄にせず、活かしていくこと。それが、私たちのものづくりの基本姿勢です。今回の『ホテルを彩った桜で染めたマフラー』も、そうした想いのもとに作られるものになります。お使いいただくお客さまにも、旅の思い出とともに、私たちのそうした想いも感じていただけたら嬉しいです」

自然との調和を模索し、未来を紡いでいこうとするWatanabe Textileの誠実な想いが込められた『ホテルを彩った桜で染めたマフラー』。BELLUSTAR TOKYOにお越しの際は、ぜひ手にとってみてください。




商品名:
ホテルを彩った桜で染めたマフラー
価格:
22,000円(税込)
販売開始日:
2026年1月20日(火)

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